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東京地方裁判所 平成2年(ワ)1701号 判決

平成元年(ワ)第一二四三五号事件原告兼平成二年(ワ)第一七〇一号事件被告(以下「原告」という。) 株式会社 元林

右代表者代表取締役 元林勝一

右訴訟代理人弁護士 斎藤健兒

同 小笠原彩子

平成元年(ワ)第一二四三五号事件被告兼平成二年(ワ)第一七〇一号事件原告(以下「被告」という。) 株式会社アダムアンドイブ

右代表者代表取締役 冨田敏夫

右訴訟代理人弁護士 長尾節之

同 荒竹純一

同 野末寿一

同 千原曜

同 野中信敬

同 久保田理子

主文

被告は、原告に対し、九一八万四九四〇円及びこれに対する平成三年九月一八日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

原告のその余の本訴請求及び被告の反訴請求をいずれも棄却する。

訴訟費用は本訴反訴を通じて二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  本訴

被告は、原告に対し、三〇二一万四四四〇円及びこれに対する昭和六三年九月一四日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  反訴

原告は、被告に対し、七五〇万円及びこれに対する平成二年二月二〇日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一  経緯

1  原告は、趣味洋品雑貨の企画、製造等を目的とし、被告は商品デザイン、グラフィックデザイン等を目的とする会社である。

2  原告は、昭和六三年九月一四日、被告との間で、被告が商標権を有する商標「アダムアンドイブ」(商標登録番号一三七二三九六〔二一類〕、以下「本件商標」という。)について、契約期間を昭和六三年九月一四日から昭和六六年一二月三一日までとし、(三)記載の解除権の特約のもとに、被告は原告が(一)記載の指定商品の明細の範囲で使用することを許諾し、原告は被告に対して右使用について(二)記載のとおり商標使用権料(ロイヤルティ)を支払うとの商標使用契約を締結し(以下「本件契約」という。)、被告に対し、初年度ミニマムロイヤルティ三〇〇万円、デザイン料一〇〇万円、広告分担金九六万円を支払った。

(一) 指定商品(一七点)の明細

(1) 皮小物商品

札入、名刺入、免許証入、パスケース、パスポートワレット、小銭入、キーケース、キーホルダー、小物ポーチ、セカンドポーチ、クラッチポーチ

(2) メタルグッズ

キーホルダー(メタル素材)、コンパクト、アトマイザー、カードケース、ピルケース、小物ケース

(二) 使用権料

(1) 商標使用権料(ロイヤルティ)は原告の販売額(会計上の売上)の五パーセント

(2) 各契約年度並びにミニマムロイヤルティの額及び支払日

① 初年度(昭和六三年九月一四日から昭和六四年一二月三一日)は三〇〇万円(売上額六〇〇〇万円相当)を昭和六三年九月三〇日限り支払う

② 二年度(昭和六五年一月一日から昭和六五年一二月三一日)は三五〇万円(売上額七〇〇〇万円相当)を平成二年一月一〇日限り支払う

③ 三年度(昭和六六年一月一日から昭和六六年一二月三一日)は四〇〇万円(売上額八〇〇〇万円相当)を平成三年一月一〇日限り支払う。

(三) 解除の特約

被告は、原告が本件契約上の義務を履行しない場合は、合理的な期間を設けて履行の督促をすることができる。その督促にもかかわらず、合理的な期間内に原告が義務を履行しない場合、被告は本件契約を解除することができる。右により本件契約が解除されたときは、原告は被告に対し、本件契約残期間の未払ミニマムロイヤルティを解除後二か月以内に損害賠償額の予定として支払う。

(1、2は争いがない)

3  被告は、昭和六二年七月に、皮製品の大手業者である松崎生産株式会社(以下「松崎生産」という。)との間で、皮製品に関して、本件商標使用契約を締結した。その後松崎生産は、皮小物を含むトータル商品の企画を立て、昭和六三年に発売した。

4  原告は、平成元年九月七日被告に到達した書面をもって、被告に対し、本件契約は被告の詐欺に基づくとして、その意思表示を取消す旨の意思表示をし、また錯誤により無効であることを通知した(争いがない)。

5  原告は、平成三年九月一七日の本件口頭弁論期日において、被告に対し、被告が本件契約にあたって、被告と松崎生産との重複契約の存在について原告に告知せず、また株式会社松崎(以下「松崎」という。)ないし松崎生産が重複する商品を販売して本件契約の実現の支障となる事態を回避する対策を講じる義務があるのにこれを放置したことが、本件契約上の債務不履行にあたるとして、あるいは被告の契約締結上の過失にあたるとして、本件契約を解除する旨の意思表示をした(記録上明らかである)。

6  被告は、平成元年九月二九日ころ、原告に対し、商品開発上の打合せを呼び掛ける通知をしたが、原告は何の応答もしなかった。そこで被告は、同年一〇月九日到達の書面をもって、原告に対し、本件商標使用義務違反を理由に本件契約を解除する旨の意思表示をし、約定損害賠償額として、未払のミニマムロイヤルティ額相当の七五〇万円を支払うよう求めた。

また被告は、平成二年一月一六日到達の書面をもって、原告に対し、平成二年一月一〇日までに支払うべき三五〇万円の本件商標使用料の支払いを相当期間内に支払うよう催告し、その期間内に支払わないときには本件契約を解除する旨の意思表示をした(争いがない)。

7  原告は、主位的に、被告が本件契約にあたって、被告と松崎生産との重複契約の存在について原告に告知せず、また松崎ないし松崎生産が重複する商品を販売することによって本件契約の実現の支障となる事態が生ずることを回避する対策を講ずる義務があるのにこれを放置したことが債務不履行にあたるとして、本件契約を解除し、右債務不履行によって原告に生じた損害の賠償を求め、予備的に(一)被告は、本件契約締結に当たり、その締結に先立って松崎生産との間で皮小物に関する商標使用契約を締結し、本件契約と同一の時期に松崎が一斉に販売を開始する態勢にあったから、これを告知すべき信義則上の義務があるのにこれを怠ったことが、契約締結上の過失にあたり、これは原告が本件契約に基づく商品の開発、製造、販売を行うことにとって基本的に障害となる性質のものであるから、本件契約を解除し、右によって原告に生じた損害の賠償を求め、(二)また本件契約は被告の詐欺による意思表示に基づくからこれを取消し、あるいは原告の錯誤に基づくから無効であり、さらに被告が原告に前記事実を隠したまま本件契約を締結したことは不法行為であるとして、その損害賠償を請求する。

二  争点

1  本件契約において、被告は、原告に対して本件商標使用を許諾した一七点の指定商品のうち、コンパクト及びアトマイザーを除く一五点(以下「本件指定商品」という。)については、原告以外の第三者と重複して契約しない義務を負っていたか。その場合さらに重複契約の存在を告知し、既に存在する重複契約状態を解消するための措置を講ずる義務があったか。

2  被告には、本件契約上の債務不履行があったか。

(一) 被告は、松崎生産に対して、昭和六三年九月以降も、本件商標を用いたスモールレザーグッズの販売を許していたか。

被告は、松崎生産に対して、皮小物について昭和六三年秋冬物に限り、かつこれを同年八月中に売り切るという条件での暫定的許諾であると主張している。

(二) 松崎生産は松崎の生産部門と言うべき実質上一体の会社であるか。

3  原告は、本件契約にあたり2(一)の事実を知っていたか。被告はこの事実を原告に秘匿していたか。原告はこの事実について錯誤があったか。原告の錯誤には重大な過失があるか。

4  原告の被った損害

5  被告による契約解除の成否

第三争点に対する判断

一  争点1について

1  被告は、昭和六二年まではスモールレザーグッズ商品について他社に商標使用を許諾していたが、その期限も切れることから、新たな専門業者を探していた。一方、原告は、得意先からの紹介を受け、本件商標を用いて皮小物だけでなく関連する商品分野を含めたトータル商品について営業活動を展開していきたいと希望していたが、スモールレザーグッズ及び関連商品に関して本件商標を付した商品が出回っているかどうかについては特に調査をしなかった。

原告の中筋営業部長は、昭和六三年六月二七日、被告代表者と被告本社で対象となる商品の選定交渉を行った。被告は、松崎(ないし松崎生産)に対してバッグについて本件商標使用を許諾していること、したがって原告が商標使用を希望するクラッチ、セカンドショルダーについては、ショルダーが松崎(ないし松崎生産)のバッグと抵触するのでクラッチまでの大きさの商品とすること、また、コンパクト及びアトマイザーを商標使用商品に加えることに対しては、これらが化粧品関係商品なので、被告が他社とも契約することがあることを特に念を押し、中筋もこれを了解した。このような交渉を経て、被告側で作成用意した契約書が取り交わされ、本件契約が成立した。なお当時被告代表者は松崎と松崎生産が別会社であることを特に意識していなかった。

2  本件契約第一条には、被告が原告に対して商標使用を許諾した一七点の指定商品のうち、コンパクト及びアトマイザーについては、わざわざ「他社とも契約できる」との注意書がついているのに対して、その他の本件指定商品についてはそのような注意書はなく、また、本件契約第七条後段には「本解約後被告はいつでも第三者と本商標契約を締結できるものとする。」と記載されている(争いがない)。

3  このような、原告と被告との交渉経緯、特に松崎(ないし松崎生産)に商標使用を許諾していたバッグとの抵触を避けるために対象商品の範囲を限定する一方、化粧品関係商品については特に他社と重複契約を締結することがあることについて了解をとり、かつこれについてわざわざ契約条項にその旨明記していること、及び解約後には他社とも契約できるなどといういわば当然の条項まで契約に盛り込んで、契約期間中には他社との契約ができないことを当然の前提とするような構成をとっていることからすると、本件契約上、被告は本件指定商品については、契約期間中、原告以外の第三者と重複して商標使用契約を締結しないことを契約の要素とし、そのような不作為債務を負っていたと認めるのが相当である。そして商標権者は、商標使用権者に対してこのような不作為債務を負う以上、すでに第三者と重複契約を締結している場合には、特に反対の合意がないかぎり、直ちにそのような重複契約状態を解消し、重複契約に基づいて製造販売されている商標を使用した他社の商品が市場に流通して、新たに設定した商標使用権者の商標使用権が侵害されることのないように適切な措置を講ずるべき契約上の義務があると言うべきである。

被告は、独占的使用権を設定する場合には、特に独占的である旨を明示するのが契約上の通例であるし、また原告との間で取り決めた商標使用権料は、この種のものとしては最低の五パーセントであることを挙げて、被告には右のような債務はないと主張し、《証拠省略》中にはこれに沿う部分があり、また重複契約を締結しないのは商道徳上の問題にすぎないとの部分があるが、一般論の域を出ず、前記のような事実関係に照らすと採用の限りではない。

二  争点2について

1  被告は、昭和六二年七月、松崎生産との間で、バッグ類の商品について本件商標使用を許諾する契約を締結した。松崎生産は、バッグ類のみならずこれと関連する商品である皮小物についても同様に商標使用の許諾を希望していたが、被告が他社との間でスモールレザーグッズについて契約しており、その契約後には他の専門業者と契約する意向であるとして、断られていた。ところが、昭和六三年一月ころ、被告から皮小物についての使用許諾が得られることとなったので、松崎生産は、松崎との打合せの下に、早速昭和六三年秋冬物商品についての製作準備に入り、デザインなどについて被告との綿密な打合せを経て、バッグと皮小物について全体として統一的な製造を行い、松崎をとおして販売した。

松崎生産は、創業一〇〇年を超える老舗の松崎を中心としたマルエムグループと称されるグループ企業に属し、皮製品の製造を目的とし、本件商標を付した製品を含め、その製品の殆どを松崎に販売し、松崎がこれを卸し販売していた。松崎生産の生産量やその販売戦略についてはすべて松崎が決定していた。松崎生産と松崎とは資本関係はないものの、同一のビルに本店を置き、以前は代表取締役が同一人物であった。また本件商標を使用する企業が加入する建前となっている「アダムアンドイブクラブ」の会員名簿には、松崎生産ではなく、松崎が会員として登載されている。

2  原告の当時の東京支店長であった元林昌三は、昭和六三年一二月七日、松崎生産を表敬訪問し、松崎のショールームを見学した際、本件商標を使用した商品として、バッグ類だけでなく、財布や小物などの皮小物類まで展示されているのに驚き、松崎生産の中田課長に尋ねたところ、同課長も原告が皮小物について被告との間で本件商標の商標契約を締結していることを知らずに驚き、共に被告に尋ねてみることとなった。原告から被告に松崎生産の件について尋ねたところ、被告代表者は、松崎生産との契約は鞄とバッグだけであり小物については含まれていないが、鞄とハンドバッグと小物をトータル商品として製造販売して展開することを一時的に認めただけなので、松崎生産の小物類は自然消滅するから問題はないとの回答に止まった。一方松崎生産の側から被告に対する問い合わせに対しても、被告代表者は、売場で競合しなければいいではないかという態度であった。そこで、原告は、松崎生産との間で販売調整の話を含めた事態収拾の交渉をしたが、利害関係が噛み合わないままに経過し、被告の側からは具体的な動きはなく、原告と松崎生産との間で話をしてくれというような消極的姿勢に終始していた。

被告は、松崎生産には昭和六三年秋冬物商品に限定して皮小物の販売を認めただけで、現実にも松崎生産は昭和六三年八月いっぱいで販売を終えたと主張し、松崎生産の販売実績報告書である《証拠省略》を援用するが、昭和六三年一二月当時も松崎生産が皮小物をも含めたトータル商品販売の方針を持っていたことからするとその信用性は甚だ疑わしいし、また松崎生産と松崎との密接な関係からすると、松崎生産のみならず松崎の販売についてもこれを一体の販売活動と見るのが相当であるから、そのような販売活動が松崎のものであったとしても、本件契約上の被告の義務の内容には消長をきたさない。

3  原告は、その後平成元年一月に大阪で、同年二月には東京で、それぞれ本件商標を用いた商品について春夏物の試作展示会を催した。その試作品の作成に当たっては、デザインやコンセプトにいたるまで、個別具体的に被告代表者からの指示と承認のもとに行われた。また原告は、同年夏には、さらに秋冬物についての試作展示会を催す予定にしていた。

ところが、元林昌三は、平成元年六、七月に一般の商店数ヵ所で松崎生産の皮小物商品(札入れ、パスケース、小銭入れ)が上代の三割引き位の値引き商品として販売されているのを見つけた。そのなかには原告がその年の春夏物の試作品として作った皮小物と同じコンセプトのものも含まれていた。

また、原告は、平成元年九月ころ、被告から、松崎のほか本件商標を使用した四社の商品カタログの送付を受けた。そのカタログはその年に販売された商品やその年の秋冬物商品に関するもので、松崎の商品については昭和六三年秋冬物のセールスマニュアルと一部商品を同じくするが、これとは異なる皮小物商品をも登載したカタログであった。

4  このような事実に照らすと、被告は、松崎生産(及びこれと実質的に一体と評価できる松崎)に対して、皮小物商品についても本件商標の使用を許していながら、これと重複して原告との間で本件契約を締結したのであるから、原告に対する関係で、直ちに松崎生産との間の重複契約を解消し、原告との契約期間中には、松崎生産の製造にかかる商品が市場に流通しないような適切な措置を講ずべき契約上の義務があったのに、これを怠り、松崎生産との間の契約関係を(部分的に)解消する努力や、その製造商品の流通阻止のための適切な措置を講じないばかりか、現実に商品が競合しなければよい、時間がたてば競合状態も解消するといった無責任な態度に終始していたのである。このため、原告が本件商標を使用して商品の販売活動に入った時期に、本件商標を付した松崎生産の皮小物商品数種が値引きされて一般の店頭に並ぶ事態となり、原告が本件商標を用いて皮小物を含めたトータル商品について展開を企図していた営業活動に重大な支障を来す結果となったことは明らかである。

しかるに被告はこのような事態に対しても何らの有効な措置を講ずることなく放置し、重複契約締結について被告の責任を問う本訴提起後も、債務の履行について自らには非がないとの態度に終始し、しかも原告の二年度以降のミニマムロイヤルティ支払い義務の不履行等を理由として本件契約を解除するとの意思を明示して反訴を提起していたのであるから、被告のこのような債務の不完全履行に対しては、原告は、本件商標契約全体の目的を達することができないものとして、後履行義務と解せられる二年度以降のミニマムロイヤルティの支払いの提供及び被告の債務の履行催告をすることなく本件契約を解除することができると解せられる。

なお、商標権者に対して、すでに重複契約を締結した相手方の商品の流通を阻止することまで要求することは過酷であるようであるが、そのような重複商品の出現という事態は自ら重複契約を締結したことに起因するのであって、これを甘受すべき合理的理由がある一方、そのように解さなければ、後に重複契約は存在しないと信じて商標使用権の設定を受けた者の法的地位が極めて不完全なものとならざるを得ないことに照らし、契約上の信義誠実の原則に照らしても相当と考えられる。

三  争点4について

原告は、被告に対して、初年度ロイヤルティ、初年度デザイン料、広告分担金及びクラブ会費として合計四九九万円を支払ったほか、本件商品の展示会を東京と大阪で二回開催して、合計二八一万一〇〇〇円の費用を支出し、広告代として三八万一〇〇〇円を負担し、新商品開発のためのサンプル代として一〇〇万二九四〇円を費やした。

これらの費用は、被告の債務不履行及びその結果本件契約が解除となったために、原告が現実に被った損害と言える。よって、被告は原告に対して右損害合計金九一八万四九四〇円及びこれを請求した日である平成三年九月一七日の翌日以降の遅延損害金を支払うべき義務がある。

原告は、このほかに、原告が松崎生産の商品を購入した代金二万九五〇〇円及び得べかりし利益二一〇〇万円を請求するが、松崎生産の商品を購入した代金は被告の債務不履行と相当因果関係にある損害とは言えない。また原告の得べかりし利益については、これを確知するに足りる証拠はない。

四  争点5について

本件契約上、ロイヤルティの金額が商標使用権者の販売額に連動して定められているけれども、一方でミニマムロイヤルティとして定額が定められていることに照らすと、商標使用権者である原告に、商標使用義務があるとまでは認められない。

また原告は初年度のミニマムロイヤルティは支払いずみであり、二年度以降のミニマムロイヤルティが未払いであるが、その各履行期前に、これより先履行というべき初年度にかかる本件契約上の本質的債務の不履行状態が継続していたのであるから、その不履行状態を解消することなくして、原告に対して二年度以降のミニマムロイヤルティの支払いを求めることはできない。そして、そのような不履行状態の解消について被告が履行の提供をしたことについては何らの主張立証もないから、被告は本件契約を解除することはできない。よって、被告の反訴請求は理由がない。

(裁判官 佐藤陽一)

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